三日月の下、君に恋した
「めずらしーよなー。優等生のおまえが上役に嫌われるなんて。何やらかしたんだ?」

「別に。むこうが勝手に嫌ってるだけだ」

「そーかあ? おまえのほうが嫌ってるよーに見えたけど?」

 リョウの口調がいかにも楽しげに弾む。


「マズイんじゃねーの? あんなエライ人怒らせちゃって」

「いいんだよ。俺はあの人とうまくやるつもりはないから」


 リョウが一瞬黙りこんだ。

 顔を上げると、興味深そうな目とぶつかる。


「らしくねーこと言うなあ。何かあったのか?」

「別に」

 しつこい。ほんとうにこいつは……めんどくさい。


「……ひょっとして、あの女が絡んでるとか?」

「彼女は関係ない」

「ふーん。でもずいぶんかばってたよな。気のせいか?」


 リョウはタバコを咥えたまま「やっぱムリ」と言って、クククと押し殺した笑い声をたてた。

「こんな面白そうなイベントに、参加せずにいられるかってーの」

 航は肩を落とした。昔からこういうやつだった……。
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