私の好きなあなたが幸せでありますように
こんな時、ふと思うことがある。

ここは本当に私の知っている道なのだろうか?

全部を疑いたくなる。

たとえば手に持っている地図とか。

たとえば今日飲み会の声がかかったこととか。

全部全部嘘なんじゃないかと、ふと思う瞬間がある。

そうこうしていても始まらない。
さて、打開策を見つけなければ。
といってもやることはいつも一緒。
とりあえず、人に道を尋ねる。
これに関してはちょっと自信がある。
胸を張って言うべきことではないかもしれないけれど、自信を持って人に道を聞ける。
何故って、それくらい私が迷子慣れしているからである。

声をかけるなら女性の方がいい。
それもちょっとおばちゃんくらいがいい。
まず間違いなく断らない。嫌な顔もされない。

ただ残念なことに19時を回った裏路地にはあまり人気がなかった。
わざわざ隠れ家的な店をチョイスしないで欲しい。隠れてなくても私にとって目的地を探すのは一苦労なのに。

3月だ。
暦の上ではもう春だ。
それがどうした。
寒いものは寒い。
しかも暗い。
人気もない。
一体どうしろと。

はぁとため息をついて携帯電話を取り出した。

そう。
私には文明の利器があるではないか。
自力で向かうのが無理ならば、もはや救出してもらう以外に道はない。
とにかく寒い。
早く店に行きたかった。
もう約束の時間を少し過ぎているから、先にワイワイやっているんだろうなぁと考えながらボタンを押そうとした。

そのときだった。

人影が見えた。私は躊躇わなかった。
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