オールホワイト
家に帰って、雪の部屋のドアをノックする。


「白?どうしたの。」


雪が、部屋に入って、と言うので、雪のベッドに座った。


「あのさ、雪。」


「なに?珍しく真剣な顔して。」


「珍しくって何だよ!俺はいつでも真剣だっつーの!」


「はいはい、ごめんなさい。…で、どうしたの?」


正直に話したら、雪は怒るだろうか。
怒ったとしても、俺が悪いんだから、仕方無いか。


「俺さ…、雪に黙ってる事があるんだ。」


「うん、何?」


唾をゴクン、と飲み込んで、決意を決めた。


「白海さんから、バレンタインチョコ貰ったんだ。雪宛てに。…でも、俺、そのチョコを、雪に渡さないで、食べちゃった。」


俺は俯いて、雪の顔を見なかった。


「え?そうなの?」


雪はいつもと変わらない口調で、言った。


「ちょうど良かったよ。一個多くお返し買っちゃったからさ。それを白海さんに渡しておくよ。」


「え…?怒らないの?」


俺はキョトンとして、雪を見た。


「間違えられるのは、いつもの事だろ?どっちにしろ、白にチョコをよく食べてもらってるし、別に何も問題無いじゃないか。」


「でも…。」


それで、いいのだろうか?


雪から、彼女に、お返しを渡して…何も無かったかのようにしたら、一番楽なんだろうけど。


俺は、打ち明けた筈なのに、スッキリしないままモヤモヤしていた。
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