琥珀色の誘惑 ―王国編―
声を荒げたライラに、側近のターヒルをはじめ警護の数人が駆け寄り、取り押さえようとしたが……。

ミシュアル王子はスッと右手を差し出し、彼らを下がらせた。


『よかろう。話せ』

『……ありがたき幸せ』


ライラはアバヤの上から胸元を両手で押さえ、祈るように話し始める。


『長老会議の決定はまだと聞いております。もし、わたくしをお選び頂けましたら……わたくしは王宮を離れて暮らしても構いません。王宮に居ろと言われたら、正妃の宮に籠もっております。アーイシャ様とのご関係に口を挟むことなく。慎ましやかにあなたさまのご命令に従います。どうぞ、王太子殿下……わたくしをあの横暴なる父からお救い下さいませ。この国で、我が父に命令出来る方は、次期国王たる聡明な王太子殿下しかおられませぬ』


ここまで一息に言うと、ライラはふっと顔を上げ……憂いに満ちた瞳でミシュアル王子の目を見つめた。

そして堅苦しい口調を、突如、幼なじみの兄を慕う親しげな口調に変えた。


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