琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ヤ、ヤイーシュ! ねえ、ちょっと。一体何人の女の子を泣かせてるわけっ?」

「そう言われましても、あの少女ら全員に許婚がおります。それを私にどうしろと?」


確か……「娘たちには全て相手が決められている」と言っていた気がする。困惑する舞にヤイーシュは説明してくれた。



アル=バドル一族は家族単位で生活する。ようするに、あの大きなテントに家族全員で雑魚寝するわけだ。その為、昔はトラブルも多かったらしい。

特に女性に対して“早い者勝ち”という風習に問題があった。

さすがに、初潮前の少女には手を出さない掟がある。それを破った者は即、死刑! ということは……少女が娘になったことを知るや否や、男たちは先を争って群がった。

深夜のテントでバトルが勃発し、相手を間違えるという笑えない失敗も起こった。

結果、強い男に妻が複数集まることになり……。最終的には、結婚相手を求めて町に定住する若者が増え始めたのである。

そういった状況を憂慮し、ヤイーシュの祖父である先々代族長が“一夫一婦制”と“女子の誕生と同時に夫を決める”という掟を作った。

彼らにとって部族の掟は、国家の法より優先される。その掟を破れば、現代でも当然死刑になるのだという。


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