琥珀色の誘惑 ―王国編―
ヤイーシュは舞の質問に答えないまま、テントの入り口から顔を出す。そのまま、二言三言アラビア語で言葉を交わしている。


「ヤイーシュ、あの……」

「舞様。シーク・ミシュアルがあなたを迎えに来られています」


その言葉に舞の心臓は跳ね上がった。

ミシュアル王子に会える。そう思うだけで、すぐにも表に飛び出して行きそうになる。


「あ、待って……あの、すぐにちゃんとした格好をするから。アルにちょっと待ってって伝えて」

「あなたに手荒なことはしたくなかったのですが……」

「え?」


ヤイーシュは大股で絨毯の上を横切り、一気に舞の正面に立った。

そのまま、彼女の体から毛布を剥ぎ取る。昨日と同じ格好だが、砂漠の早朝だと少し肌寒い。


「きゃっ! ちょっと、なに!?」

「暴れたら怪我をしますよ。ジッとしていて下さい」


言うなり――ヤイーシュは小さなナイフを取り出し、舞のチュニックを引き裂いた!


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