琥珀色の誘惑 ―王国編―
感触がリアルになり、アルのソレは熱く湿り気を帯びてくる。本物だ、と思えば思うほど、舞は未知への恐怖心が高まり……。

だが、ミシュアル王子の手は大きく、彼女はされるがままだ。


「お前は決して服を脱いではいけない。少しで良い……このまま、私に付き合ってくれ」


熱を含んだ掠れる声で、ミシュアル王子は舞の耳元で囁く。だがその時、ふいに舞の瞳から涙が零れ落ちた。


初めはドキドキだった。でも、エスカレートする彼の行為に、舞は戸惑いのほうが先に立ち始める。

これが愛情表現と言われても、経験のない彼女にはよくわからないのだ。舞は自分がただの“夜伽の女”で、いつかの娼婦と重なり、悲しくて堪らなくなった。


「やっと逢えたのに……こんなの酷いよ。“金品を受け取り、性的快楽を奉仕する女性”と、わたしって同じに思える」


ミシュアル王子は溜息をつくと、やっと舞の手を自由にしてくれた。

そして、自分の膝の上に舞を抱き上げる。


「馬鹿を申すな。だが、あと三日がどうにも待ちきれず、私も焦ったようだ。……お前の涙には敵わぬ。これ以上、お前を混乱させるようなことはしない。だから、朝まで私の腕の中にいるように。これは命令だ」


サッと譲歩してくれたミシュアル王子が大人の男に思え、舞は恥ずかしかった。

自分も一人前の女になったつもりが、いざとなれば怖くなったり悲しくなったりする。そんな自分が少し悔しい。


その夜は、ミシュアル王子の優しい命令に、静かに身を委ねる舞だった。


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