琥珀色の誘惑 ―王国編―
(鞘ってわたし!? あの“ジャンビーア”がどうやって入っちゃうわけ? 何とかなるもんなのっ。それとも……アレが標準とか?)


舞はラシード王子の……を思い出そうとするのだが、握ったわけではないのでサイズはよくわからない。

ミシュアル王子の場合は、逆に見てないので比べようがなく……。


ふと気づけば、舞は見慣れた廊下に立っていた。



そこは、舞が最初に与えられた部屋の近くだった。

記憶を辿りながら角を曲がると、何の変哲もない木の扉が見える。しかし、扉の上には葡萄らしき彫り物があり、舞はそれを目印にしていた。

部屋の前には見張りもおらず、鍵も掛かっていないようだ。


舞はそうっと押し開け、中に滑り込む。部屋はシンとして、太陽が昇る寸前の砂漠と同じ匂いがした。

何となく懐かしく、ヤイーシュのことを思い出す。

まさか族長をクビになったりしないよね、と不安になるが……。それをミシュアル王子に聞いたりしたら、またまた騒動の素である。

ミシュアル王子同様、舞も少しは学習したと言えよう。


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