琥珀色の誘惑 ―王国編―
「それで、私にどうしろと言うのだ」


文字通り苦虫を噛み潰したような顔で、ミシュアル王子は舞に尋ねる。


「ライラを助けてあげて。娘さんと一緒に、暮らせるようにしてあげて」

「無理だ」

「無理じゃない! アルだったら何とか出来るでしょう? わたしも協力する。だから……お願い」


ライラの従順な素振りにコロッと騙され、彼女を庇うミシュアル王子たちには頭にきていた。だが、ライラは命懸けだったのだ。初恋と異国ムードに浮かれた舞じゃ敵うはずがない。

いっそ清々しく、ライラの事情がわかった分だけ舞はスッキリした気分だ。


「方法はある。だがその場合、私はアッラーの誓いを破ることになるだろう」

「えっと……それって……どういう」


重々しいミシュアル王子の返答に、舞はゴクリと唾を飲み込んだ。


「私がライラを正妃にするのだ。マッダーフは最初の約束を守り、ライラの娘アーイシャを彼女の妹の名目で後宮に差し出すだろう。ライラは望み通り娘と共に暮らせる。但し、お前は生涯、第二夫人の座に甘んずることになる。お前のいう“愛人”だ。舞、私はお前の願いを叶えてやる――さあ、選べ!」


それは、究極の選択だった。


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