琥珀色の誘惑 ―王国編―
おもむろに涙を拭うと、


「アルに聞いてくる! だって、わたしたちの結婚も、ライラの子供も、どうなったのか全然わからないんだもの」

「いけませんわ。儀式の邪魔をしては……アーイシャ様っ!」



すでにとっぷりと日は暮れていた。

護衛は野営地の外を囲み、アル=エドハン一族は儀式に集まっている。

舞がテントの脇をすり抜け、音楽の聞こえるほうに近寄っても誰にも見咎められることはなかった。


不意に視界が開け、広場を取り囲むように松明の火が灯っている。

中央にお祈り用に思える絨毯が敷かれていた。そこに置かれた白い台が祭壇らしい。多くの人たちは絨毯を踏まないように広場に腰を下ろしている。

そして、祭壇の前に跪く、赤い衣装と白いトーブが舞の目に映り……。


(イヤ……だ。アル、誓わないで……嘘でもアッラーにライラへの愛を誓わないで!)


一歩踏み出そうとした瞬間――大きな手が舞の口元を覆った! 


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