琥珀色の誘惑 ―王国編―
そんなはずはない。東京での舞の自室に比べれば、ざっと五倍はあるだろう。

しかも、その部屋の真ん中に畳が三枚置かれていた。そして畳の上にはなんとコタツが……。

シャムスが見せてくれた日本の雑誌には、モデルの女性がコタツに入ってニッコリ笑った写真が載っている。しかも、「畳にコタツ、日本人にはこれが一番落ち着くのよね」と大きな文字で書いてあった。


(うーん。でも、クアルンでコタツって出番ないよね)


と思った舞が甘かった。

ここダリャ近郊では、冬期は気温が十度以下になってヒーターが必要だという。


舞が寂しくないように、と日本語の本も置かれ、クアルンで視聴可能な日本語映画のDVDも用意されていた。大きなベッドはふかふかで、シーツからはお日様の匂いがして……。



「そうじゃなくて……アルにとって、わたしが一番だって思ってたから。なのに、ライラを一番の客間に」

「お前を客間に通すはずがなかろう」

「ちょっと待ってよ。じゃあ、わたしが通された部屋って何なわけっ!?」

「“妃の間”と呼ばれている。隣は私の寝室だ……不満か?」


予想外の返事に舞はドギマギする。

急に、髪を撫でるミシュアル王子の指に“男性”を意識して、慌てて後ろに下がろうとした瞬間だった。

舞の身体を覆い隠す、たった一枚の白い布がふわっと緩み――。


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