琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子は身を屈め、舞と目線を合わせた。


(だから……反則なんだってば! その琥珀色の瞳っ!)


クリスタルグラスの中で上等なブランデーが揺れているようだ。射し込む光の角度によって、金色の度合いが変わる。きらきら光る度に、舞のドキドキが高まって行く。

舞は髪を一つに縛り、クルクル捻ってバレッタで留めていた。首筋にキスされるのに、何の障害もないように……というわけじゃないが、結果的にそうなってしまっている。


「なんという美しい肌だ。水滴を弾いてダイヤモンドのように煌いている。お前は私の宝だ」


恥ずかしくなるようなミシュアル王子の賞賛が、慣れてきたようで怖い。

最初は、絶対にあり得ないから、と思っていた。それが……ひょっとして、ちょっとは自信を持ってもいいの? に変わっている。

ミシュアル王子のもう片方の手は、水面ギリギリで舞の胸を下から掬い上げた。


「ゃ……アル……水の中では、しない、って」

「もちろん、お前の中に侵入するような真似はしない」

「ふ、ふたりで、オアシスの中でくっついてたら……変に思われるってば」


すると、ミシュアル王子は唐突に舞の肌から唇を離したのだ。


「なるほど。では、見えぬようにしよう」

「え……?」


それってどういう事? と舞が聞く前に、なんとミシュアル王子の姿が消えた。


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