琥珀色の誘惑 ―王国編―
さすがに夜までトーブは着ておらず、舞と同じ寝間着姿だ。どうやら男女兼用で、日本の浴衣のようなものらしい。


「アル? あの……えっと」


この時、舞の頭に浮かんだのは――これは、俗に言う“夜這い”に違いない! 

でも、花嫁は結婚まで純潔でいなければならない、というのはどうなったのだろう。イスラムの教えすら忘れそうな情熱で、ミシュアル王子に押し倒されたら……。

舞がそんな妄想に赤面し掛けた時、ミシュアル王子から聞こえたのは全く予想外の言葉であった。 


「舞、私をこの部屋で匿うのだ」

「は?」

「まさかライラがこのような真似をするとは思わなかった。およそ父親の命令であろうが、嘆かわしいことだ」


彼らしくなく、動揺を露わにする。


「ライラが……何をしたの?」

「見張りが寝込んだ隙に部屋を抜け出し、私の寝室に来たのだ」


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