琥珀色の誘惑 ―王国編―
国王であっても女官以外の女性に気軽に声は掛けられない。

下手をすれば、愛妾として召し上げたい、といった意味で受け取られてしまう。例外はこの後宮内だけだ。


舞にしてもそうだ。

仮にターヒルに聞きたいことがあっても、女官のシャムスを通じて尋ねることになっている。直接声を掛けたら舞の評判は下がるし、ターヒルが主君の妻に横恋慕している、とも取られかねない。

面倒くさいにも程がある、というのが正直な気持ちだ。


「ライラもなんなのよ! ラシードと仲良くやってるならそれでいいじゃない。なんでわざわざ」

「お前が夫に対する尊敬を口にせぬからだ! 女官らがざわめいたと言うではないか」


あの時、ライラが親密そうに話し始めてすぐ、シャムスは部屋から出て行った。


「私がお話を聞いて良いのは、結婚後でございますから」ということらしい。


それで女官は寡婦が多いのだ、と舞も納得した。

壁際に控えていた女官は全員、寡婦か既婚女性なのだろう。彼女らが口元を寄せ合い、ヒソヒソやっていたのは覚えている。

舞にすれば、ライラの明け透けな言動に眉を顰めているのだ、と思っていたが……。

まさか逆だったとは。


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