琥珀色の誘惑 ―王国編―
日本に住んでいるというミシュアル王子の弟、アーディル第二王子に舞は一度も会ったことがなかった。

逆に、ラシード第三王子とは、本来なら考えられないほど会っている。しかも、彼のジャンビーアを見てしまう、という貴重な経験もさせてもらった。


「まあ、いずれ機会もあろう。奴は融通の利かない堅物だからな――会っても、特に愉快なことはない」


その言葉に舞はビックリする。

まさか、ミシュアル王子より堅物がいたなんて!


「何を言う。私は充分に柔軟な男だぞ。そうでなければ、お前を正妃になど出来なかったはずだ」


確かに、その点は発想が並じゃないと思う。


「ひょっとしたら嫌われてるのかなぁ、なんてね。王妃に相応しくない、とか思われてる気がして」


舞にはそれが一番の不安だ。

お堅い人なら尚のこと。ミシュアル王子やヌール妃は何も言わない。でも、日本人婚約者と結婚する兄に抗議の意味も込めて日本に住んでるんじゃないか、なんてことまで考えてしまう。

それを口にしたら、ミシュアル王子は声を立てて笑った。


「私の頭が“石”なら、ディルの頭は“ダイヤモンド”だな。硬度は相当なものだが、意外に脆い。知っておるか? ダイヤは千度の炎で燃えてなくなる。奴は強さゆえに燃え尽きて、クアルンを去ったのだ」


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