琥珀色の誘惑 ―王国編―
――マッダーフ軍務大臣は、前王太子の放蕩を後押しし、他の婚約者を排除して傀儡の王を作ろうとした。しかしそれに失敗し、傀儡の首を挿げ替えることにしたのだ。


そんな恐ろしい噂もあります、とシャムスは声を潜めた。



ライラはこの世に産まれた時から、“国王正妃”の重荷を背負わされて生きてきた。ミシュアル王子と婚約しながら、何も知らずにのほほんと生きてきた舞とは訳が違う。
 
しかし、前王太子から速攻でミシュアル王子に寝返る辺り、マッダーフは相当な人物のようだ。

もし、漠然と日本人婚約者ではなく、舞の名前が取り沙汰されていたら……。今頃、命はなかったかも知れない。

舞はそんな父親を持ったライラに少し同情した。


だがこの数時間後――


(なんちゅう性悪女なのっ! ライラなんて二度と同情するもんかっ!)


そう叫ぶことになる。


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