そして彼女にキスをする
第二章
最初の頃、彼女は何もしなかった。
ただ、じっと窓の外を眺めていた。
何を見ている訳でもないのだが…。
やはり、彼女は自分の事を何も喋らない。
しかたがないので、勝手に名前を付けた。
海で拾ったので“海”(ネーミングセンスはないな)。
“海”は少しずつ家の事をやり始めた。
洗濯、掃除、食事のしたく…。
少しは話すようになってくれたが、それでも必要な事以外は話さない。
いつかは心を開いてくれるのだろうか…。


ある日“海”が出掛けていって、なかなか戻らない事があった。
どこに行ったのか、聞いても答えてくれない。
それから、そんな日がたびたびあるようになった。
その度に僕は、もう帰らないんじゃないかと不安になる。
心配になる。
でも怒れない。
本当に帰らなくなりそうで何も言えない。
“海”は一体何処に行っているのだろう。
何をしているのだろうか。
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