そして彼女にキスをする
第五章
翌日、翌々日、“海”は帰ってこない。
どうしたのだろう。
何かあったのだろうか。
それとも、もう帰ってこないつもりなんじゃ…。
不安が頭をもたげる。
どうしよう。
いてもたってもいられなくなり、
「そうだ。この間の駅。」
えーと何処だっけ。
ここら辺と似た所だったよな。
急いで出ようとすると、電話が鳴る。
「はい、もしもし…。」
くだらない勧誘の電話だった。
「いえ、いりません。いえ、結構です。」
そう繰り返していると、チャイムが鳴る。
「誰か来たんでそれじゃ。」
無理やり電話を切り、ドアを開けると“海”が立っていた。
「お帰り。」
何も言わず、部屋に上がる。
「心配してたんだよ。何処に行ってたの?何かあったのかと思って気になって…。」
何も言わず振り向き、僕を見る。
まただ。
またこの瞳。
何を言っても、何をしていても、このガラスのような瞳が僕を見る。
いや、見てはいない。
僕を通り抜けて、そして何も見ていない。
僕は思わず抱きしめた。
“海”は何もせず、何も言わず、ただじっとしている。
腕に力を入れる。
強く強く…。
それでも“海”は何も言わない。
ただじっとしている。
僕は
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