花咲く原石
嫌がらせを受けた記憶もないし、あの辺りが獣たちも寄ってこない比較的穏やかな地域だと知っている。

では経済的な事を言っているのだろうか。

しかしちらりと見えたオーハルの横顔はシイラが想像していたよりも厳しいものだった。

なんとなく只事ではない雰囲気が感じられて不安になる。

「オーハル…。」

「全てからです。…見えてきました。あの向こうが中央区です。」

シイラの言葉を遮り、オーハルが指した先には確かに壁のようなものが見えていた。

真っ白な壁は陽の光を浴びて眩しく見える。

実態はよく分からないがまだまだ距離はありそうだった。

「あと少しです、急ぎましょう。」

オーハルはシイラを促すと進む速度を上げた。

まるで引っ張られてるようにシイラも反射的に動き出す。

しかし急ぐ身体に心が離れてしまったみたいに、気持ちだけがその場に取り残されてしまった。

オーハルの言葉が頭の中で反響する。

分からない事が多過ぎて理性でも感情でも中々消化できずにいた。

視界が揺らいでいるのもきっと気のせいじゃない、頭の中はぐるぐる回っていた。



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