花咲く原石
息をするのでさえ緊張しそうだ。

目の前にある高い壁は左右に長く伸びて門の入り口は分からない。

慎重に様子を伺いながらオーハルはシイラの腕を掴んだ。

いきなりの行動にシイラの肩が揺れる。

「ど…したの?」

シイラの声は震えていた。

しかしオーハルは前を向いたまま口を閉ざしている。

「オーハル?」

この行動の意味はなんだろうか。

一応走り出す準備だけ整えておいた方がいいのか。

何も答えてくれないオーハルを見つめながらシイラは息を飲んだ。

中央区は壁に囲まれた街という話を聞いた事がある、心の中で呟いてオーハルは入り口の方向を探った。

何度も左右を見比べ、少しの違和感を覚えてオーハルは立ち上がろうとした。

「オーハル?」

不安げに見上げるシイラと目が合う。

一瞬、オーハルの目が切なそうに揺らいだのを彼女は見逃さなかった。



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