花咲く原石
「私はあちらを向いて作業していますから、気にせずにどうぞ。」

「ありがと…。」

とりあえずお礼は言ったものの、正直何とも言えない気分だった。

家族同然とはいえオーハルは男性だ、シイラも嫁入り前の身だし躊躇いがない訳がない。

しかしそんな事を言うと疲れきっているシイラとは違い、尚も笑顔をふるまい働き続けるオーハルに申し訳なくなる。

オーハルは宣言通りにシイラに背を向けた状態で作業を続け始めた。

あまりに普通な態度に少しでも気にしていた自分が恥ずかしくなる。

自意識過剰だ。

「お言葉に甘えます。」

シイラは優しさに甘えることにしてタオルで全身を拭いていった。

汗でベタベタしていた身体が解放されたように軽くなっていくような気がする。

ある程度拭けたところで石に腰かけて足も靴から解放してやった。

「あー。解放感！」

窮屈な空間から解き放たれた足が外気にさらされて気持ちいい。

ついつい出てしまった歓喜の叫びにオーハルは笑い声を上げた。



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