花咲く原石
確かに美味しそうだけど、ここに来るまでにこんな果実がなる樹を見かけただろうか。

川も近くにあっただろうか。

おそらくシイラが眠っている間にオーハルは一人この森の中を歩き、シイラの為に活動してくれていたのだ。

昨日も感じた申し訳ない気持ちがシイラに複雑な表情をさせた。

「オーハルは…ちゃんと休めたの?無理してない?」

「休みましたよ。」

そう言うとオーハルはシイラの傍に屈み、同じ様に食事を手元に置いた。

そして一口水を含むと思い出したように声を出す。

「シイラ程たっぷりではありませんが、十分に疲れは癒えてます。」

「…たっ!?」

意地悪な笑みを浮かべてオーハルはパンにかじりついた。

確かに日が暮れて、ほぼ夜明けまで寝てしまったシイラと比べたら睡眠時間は短い。

たっぷりという言葉を使われたことに恥ずかしくなり、それを紛らすようにシイラもパンにかじりつく。

「元々旅には慣れていますからね。シイラよりも体力はありますし、心配することはありませんよ。」



< 40 / 200 >

この作品をシェア

pagetop