片思い経由、恋愛行き


「あ、ほら、来たよ」



と言って彼の指差すその先に、“南区経由 中央駅行き”と表示されたバス。



ゆっくりとわたしの目の前に停まり、入口の扉が開いた。



「あの…っ、助けてくれて、本当にありがとうございました…!」



最後にもう一度お礼を言って頭を下げる。



彼は何も言わずにさっきの優しい笑顔で微笑んでくれた。




それを見て車内に乗り込む。



窓の外を見ると、彼がわたしに向かって手を振ってくれていた。



軽く会釈をして、彼の姿が見えなくなるまで、わたしも小さく手を振った。
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