妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
 しばらく値踏みするように呉羽を眺めていた女官は、ちらりと呉羽を通り越して、蓮台野に目を向けた。

「あなた様は、この葬送の地に居を構えておられるとか。屋敷はおありか?」

「当たり前だ。葬送の地に居を構えているとはいえ、私は只の人間だ。一応外法師として、仕事もある。住む処ぐらい、ちゃんとある」

 呉羽には貴族も庶民も関係ない。
 出世欲がないため、貴族に媚びへつらう必要もないのだ。

 不遜な態度には、それ相応の態度で返す。
 女官は少し面食らったようだが、何か納得したように、一つ頷くと、さらに一歩踏み出した。

「わかりました。いきなりな訪問で申し訳ありませぬが、ここでは満足いく話もできませぬ。屋敷に案内してください」

 申し訳ないというわりには、有無を言わさぬ強引さだ。
 だが呉羽が口を開く前に、後ろの雑色らが色めき立った。

「なっ何を仰います! いきなりこのような怪しげなところに踏み入るなどっ」

 再び雑色らは、女官にまとわりつく。
 それを、女官は一喝した。

「お黙りなさい。右丸がためです。それに、呉羽様は頼長様もお認めになられたほどのお方です。何の怪しいことがありましょう」

 その場の空気が清浄化するような、凛とした声だ。
 呉羽は少し感心した。
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