妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
---まぁ右丸は、そはや丸の正体も知らないし。実際にお姉さんが戦ってるところも、見たことないものねぇ---

 呉羽と知り合うきっかけになった鬼退治のときは、烏丸が前面に出ていた。
 一つの身体を共有している右丸と烏丸は、どちらかしか前面に出られない。

 その上、只人(ただびと)である右丸は、烏丸のように人の中から語りかける能力はない。
 烏丸が前面に出ているときは、右丸の意識は眠っているのだ。
 烏丸に身体を貸している間は、何が起こっているのか、右丸にはわからないということだ。

 呉羽が返り血を浴びながら、着物が脱げても気にせず刀を振るう姿など、想像もつかないだろう。

『あ~あ。お姉さん、何してるだろう。お姉さんが呼んでくれたら、あっという間に飛んでいけるのに』

 ‘烏丸’という名を付けたのは呉羽なので、呉羽は烏丸の主ということになっているのだ。
 妖は、名前を付けられることで、付けた者に縛られる。
 もっとも烏丸の場合は、烏丸自身が呉羽に名を付けて欲しいと頼んだのだが。
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