無口な彼が残業する理由 新装版




出張の出発日。

午前8時に東京駅集合。

私は数日分の荷物と仕事道具、

そしてブラウスの中に多数のキスマークを携えて、

7時50分頃新幹線の改札前にやって来た。

丸山くんと共に。

「丸山くん。ほんとに時間、大丈夫?」

「うん」

まだ少しだけ眠そうな顔でうなずく丸山くん。

昨夜、旅の準備をしている最中にうちにやってきて、

「何日も会えないから」

と言ってやたらと私に甘えてきた。

無表情だけど、仕草から少しだけ寂しさのようなものが伝わってきて、

なんだかすごく嬉しかった。

見送りなんて期待していなかったのに、

出社時刻ギリギリまで一緒にいてくれるらしい。

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