無口な彼が残業する理由 新装版

丸山くんは階段を上りきったところで私を見下ろした。

お前も早く上ってこい、ということなのだろう。

私はハッとして階段を駆け上がった。

「ありがとう、丸山くん」

礼を言って箱を受け取ろうと腕を伸ばせば、

「別に」

と再び足を進める。

久々に聞いた丸山くんの声は

きっととても小さかったけれど

物音をよく反射する階段と

私の心に響いた。

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