【完】君しかいらない
苦手な雨の日のはずなのに、


今は不思議と、嫌じゃない。


いつもはシンと静まり返った家の中で眠るけど、リビングから聞こえてくるテレビの音や、話し声がとても心地良い。


家の中に人がいるって、いいよな…。









トントン。


部屋のドアが軽くノックされ、愛梨ちゃんの小さい声が聞こえてくる。


「奏太くん…もう、寝ちゃった?」


…うわ、泣いてたとことか見せらんねぇんだけど。


慌てて濡れた枕を、近くに置いてあったタオルでゴシゴシと拭く。


「いや、まだ…起きてる」


「今日、泊まっていってもいいよ。あっ、お母さんがね、そうしなさいって。制服は乾燥機にかけてるから、朝には渡せるようにするからね」


「…マジで?じゃあ…そうさせてもらおうかな」


泊まらないっていう選択を、なぜかもうする気にはならなくて。



また、あの家に一人で帰るのは…さすがに今日は厳しいかなって思ったから。



< 409 / 1,444 >

この作品をシェア

pagetop