コイン★悪い男の純情
 「じゃないけど、近いかも知れない」

 淳也が苦しい表情で呟いた。



 「淳也さんて、そんな仕事をしていたの。結婚してからも、その仕事を続けるつもりだったの」


 「恥ずかしいが、そんな仕事をしていた。でも、これで最後にするつもりだった」


 「でも、その仕事は、私にプロポーズをした後でしたのでしょう」

 「済まない。プロポーズをする前に約束をした仕事なので、ついついやってしまった。許してくれ」

 「もし、私にプロポーズをしていなかったら、まだその仕事を続けるつもりだったの」

 「続けていただろう」
 「どうして、今回の仕事で最後にしようと思ったの」



 「かんなさん、勇太君を悲しませたくなかったからだ」
 「私が信じられる根拠はあるの?」



 かんなが、淳也の黒い目の中心を見詰めた。





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