コイン★悪い男の純情
 自己紹介をアチコチ見ながら
 (年収は1000万か)
 (開業医だからかなりの資産持ちだろう)



 (容貌は並下だな)



 純一が心の中で小さく呟いた。

 「どんなタイプが好みですか」
 「優しい人がいいかな。そして、包容力のある人なら」

 「僕では駄目ですか」

 「えっ!? 急に言われても・・・」
 芳恵がドギマギしている。
 純一がじっと目を見て、芳恵の心の中を覘き込んだ。
 芳恵は慌てて視線を外した。



 (この女はあまり男を知らないかもしれない)



「映画が好きなんですね」

 プロフィールシートを見ながら、純一が言葉を出した。

 「ええ」
 「今度、ご一緒しませんか」
 「・・・」

 「楽しみにしています。では、芝生の芝です。ご縁がありましたら、またお逢いしましょう。失礼します」
 「失礼します」

 純一は芳恵の目をじっと見詰めた。


 (好きだよ)


 心の中で熱く呟くと、純一は目に思いを込めた。
 芳恵の目が恥ずかしそうに輝いた。
 純一はチェックリストの芳恵の欄にダックマークを入れた。

 3分間が終わり、次の相手に。
 純一は平凡なOLや年収の低い年増女には全く関心が無かった。
 次の相手も、次も、次も、次も・・・、関心は無かった。

 外観が良くても、若くても、たとえ好みのタイプでも。
 お見合いパーティに参加しているのは単なる情報収集。
 獲物を捜すための手段でしかなかった。


 次の相手の職業に、純一は興味を示した。


 


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