コイン★悪い男の純情
 「あんた、バツイチでもええんか」
 「そんなもん関係はないですね」

 「夜は強いんか」

 「試してみますか」

 「今晩、試してもええか」

 「じゃ、7時、草月の前で」
 「曽根崎にあるお笑いの草月やね」

 「そうです。最終投票には入れないで下さいね。僕も入れませんから」

 「よっしゃ。そうするわ」
 「じゃ、今日の7時、草月の前で」
 「ほな」

 絵美の目が淫乱に笑っている。
 純一はクールな目でそれに答えた。

 「時間がきました。席の移動はここで終わりにします」

 司会者の大きな声が響き渡った。
 フリータイムとなり、話をしたい相手と話し合える時間となった。

 純一はわざと芳恵と絵美を外し、適当な相手と雑談をした。
 芳恵と絵美をチラッと見る。
 芳恵の粘っこい視線が自分を追い掛けている。
 純一が女たちと笑い転げていると、芳恵の目はとても悲しそうだった。


 絵美の視線は違っていた。

 (覚えときや。あとで死ぬ位にいじめたるから、覚悟しとき)
 そんな言葉が聞こえてきそうな、意味深な視線だった。


 (獲物は餌に喰い付いた)


 純一は長年の勘で、確かな手応えを感じていた。


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