短編集


特別な蝶の噂を聴いて、三週間。


特に今までは気にしてはいなかったけれど、その頃から妙に、虫が寄ってこなくなった。


夏、虫が一番身近な季節。


しかし、自分が道を通ると、避けるように逃げ回る、虫。





何かが始まろうとしていた――。




優紀は気付いてしまった。


虫が寄ってこなくなった頃と同じ頃から、キラキラ輝く見たこともない蝶が、自身の周りをうろつきだしたことに。


その蝶に、触れたいと思った。


噂が本当なら、自由に空を飛べるようになる。


ただしその先は、誰も知らない……。
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