死刑囚と犬
「ど…ど…」


男は独り言を言っているようだ。



「道頓堀川でさ。

鱸が跳ねるのを見たんだよ」


男の言葉は意味不明。
白い壁に向かって


男はさらに言葉を続ける。



「鱸が跳ねたんだぜ?
あの汚い川に。


腐った川もきれいになったもんだ。


道頓堀川もヘドロを
すっかり吐き出して…」



男は口を抑える。



「あ…あの川のヘドロが

俺の中に入ってきやがった…」


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