摩天楼Devil
「欲しい?」と、彼はあっさり訊く。


そ、そりゃ欲しい。


言ったらどうなるんだろう……?


あ、だめだめ。こんな高価なもの頂けないいわ。


くれる、と言われたわけじゃないのに、単純な私は一人動揺してた。


「……あげるよ。妃奈にその気があるなら……」


――え? いいの……って、そんなおいしい話が……


あるわけないと、ゆっくり彼の顔を見ると……


怪しげに微笑む男性がいた。


――あるわけないわね。


「い、いりません!」


「ふーん。このワンピ、最後の1着だったんだけどなぁ。あの、お店で……」


篤志さんは私が常連の店の住所を言った。


ウィンドウにかじりついてた店だ。
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