モノクロ*メランコリック
もう誰かは、わかっているけど。
俺は顔を上げて、その人を見る。
そこには、壁に寄りかかってこちらを見つめてくる、もうひとりの幼なじみの姿があった。
「…りさ」
「久しぶり。ちょっと待ち伏せしてみちゃったわ。話したいことがあって」
そう言って、りさは俺の前へ駆け寄ってくる。
わざと人通りの少ない廊下を選んだのも、彼女らしいなと思った。
「…なに?話って」
いつも通り、なんでもないような顔をして、訊いてみる。
すると、りさは笑みを崩すことなく、「何言ってるの」と言った。
「もうわかってるでしょ?あたしが話したいことなんて」
…うん。
たぶんもう、合コンのときの話は、美愛子から聞いたはずだ。
ふたりは仲が良いし、美愛子が俺の話をできるのも、りさだけだから。
俺たち幼なじみ三人は、美愛子を中心に動いてると言っても、間違いじゃない。
美愛子が提案したら遊びが始まり、美愛子が飽きたら遊びも終わる。
昔からそうだった。