モノクロ*メランコリック
りさは俺に背を向けて、帰ろうとする。
けれど途中で、何か思い出したように「あ」と言った。
顔だけこちらへ向けて、口を開く。
「…そういえば最近、うちのクラスの笹原って奴が、ミアにしつこく言い寄ってるのよね」
驚く俺に、りさは再びニヤリと笑った。
「一応、報告。どうするかは、あんた次第よ。……あんたに、今の状況から変わる勇気があるなら、の話だけど」
それだけ言うと、立ち尽くす俺を残して、りさは去っていった。
…ほんっと。
りさはつくづく、小悪魔だ。
ため息をついて、歩き出す。
気づけば廊下は、朱色から藍色に姿を変えていた。
下校時間が、もうすぐに迫っている。
「………『笹原』、ね」
誰もいない廊下で、ひとりつぶやく。
とりあえず、澤野あたりに聞けば知ってるかな、とぼんやり思ったのだった。
*
「ミア。美容パック中悪いけど、お邪魔するわね」
そう言って、りさが私の家を訪ねてきたのは、文化祭前夜。
明日に備えてパック中だった私は、目をパチクリさせた。
「…えっ、いきなりどうしたの」
「話したいことがあるの。真白のことよ」
なんですって!