モノクロ*メランコリック


りさは俺に背を向けて、帰ろうとする。

けれど途中で、何か思い出したように「あ」と言った。

顔だけこちらへ向けて、口を開く。



「…そういえば最近、うちのクラスの笹原って奴が、ミアにしつこく言い寄ってるのよね」


驚く俺に、りさは再びニヤリと笑った。


「一応、報告。どうするかは、あんた次第よ。……あんたに、今の状況から変わる勇気があるなら、の話だけど」


それだけ言うと、立ち尽くす俺を残して、りさは去っていった。


…ほんっと。


りさはつくづく、小悪魔だ。


ため息をついて、歩き出す。


気づけば廊下は、朱色から藍色に姿を変えていた。

下校時間が、もうすぐに迫っている。



「………『笹原』、ね」


誰もいない廊下で、ひとりつぶやく。

とりあえず、澤野あたりに聞けば知ってるかな、とぼんやり思ったのだった。








「ミア。美容パック中悪いけど、お邪魔するわね」


そう言って、りさが私の家を訪ねてきたのは、文化祭前夜。


明日に備えてパック中だった私は、目をパチクリさせた。


「…えっ、いきなりどうしたの」

「話したいことがあるの。真白のことよ」


なんですって!




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