シーサイドブルー
「君に声が届くかどうかは賭けだったよ。
でも、届いてほしくて声をかけた。」

「…どういうこと?」


問い返すと、彼は口元を緩めて目を細めた。


「俺がこんな身体になってそんなに長くはないけれど、それでもこの身体じゃ仕事をするわけでも休息が必要なわけでもない。
…だから、色々な人を見てきたよ。でも俺の声は届かない。
それがどんなにもどかしくて切ないことなのか…思い知った。」

「……。」


共感なんて、できやしない。
私は彼の気持ちをきっと何も分かってなどやれない。
…でも、〝声が届かない〟
その気持ちだけは、もしかしたら重なる部分があるのかもしれないと思う。


「君の名を呼んだのは……君のためってわけでもないのかもしれないな。」

「え…?」


彼の言葉を上手く飲み込めない。


「言い方、回りくどいよね。
止めたのは君のためじゃない。…俺のためだよ。
自分のために君を止めた。もう誰かが死ぬのを見たくなかったし、生きれるなら生きた方が良いと思ったから。」


それはとても真っすぐで純粋で、優しくて強い言葉に聞こえた。
嘘のない言葉を向けられるのは久しぶりだった。


「…真面目なのね。」

「俺の言葉を真っすぐ受け取る君の方が真面目じゃない?」


そう指摘されると、頬が熱くなった。
…こんな顔は見られたくない。

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