シーサイドブルー
大切なものは全て、今ここにある。


ざぁっと強い風が吹いた。


「凪…。」


名前の主は今もう、傍にはいない。
それでも名前を呼ぼう。


「な…ぎ…。」


声が震える。


「凪っ…!会いたいよ…。」


あなたが救ってくれた命だから。
せめて生きているうちに…


〝どうかもう一度、
あなたに会えますように〟


願いを、祈りを海に溶かす。
海が凪の元まで運んでくれることを願って。


始まったのか、終わったのか
その境界線さえ曖昧だけれど


でも、あなたがいなくなって残った想いはきっと
―――あれはきっと、〝恋〟だったのだと。



いつか気付くときが来るとしたら、それはあなたに再会した時だろう。
そんなことをぼんやり思った。


波はただ、あの日のように優しい音を刻んでいる。


凪がいてもいなくても世界は回る。
私がいてもいなくても、それは同じだ。


だけど、凪がいたから私のいる世界がまだ回り続けている。
それは大切な、とても大切な真実。

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