海坊主


「ちょっと、海外留学が必要なんだよ。海里、ずっと家の事には触れてこなかったから無知識なわけ。で、手っ取り早く済ませるために、海外留学ってなわけで・・・」



海里は、会社を継ぐんだ。



「ホントは、8月くらいに出発する予定だったんだけど、延ばしてもらったんだよ」


8月。


そのワードに、反応した。



もしかして・・・、


「あたしが、ここに来たからですか?」



和紀さんは、静かに頷いた。



「相当親に反抗したんだ。1ヶ月だけ、延期してくれって」


あたし、海里に迷惑かっけぱなしだ。


思い罪悪感が、圧し掛かった。


「『悪く感じるな』って、海里からの伝言」


海里からの・・・?


「あいつ、空港で僕に言ってくれたの。『めぐに、全部言って。俺、弱虫だから。嫌われるの怖いから。手紙が、精一杯だったんだ』って」


ありがとう、海里。


手紙だけでも、嬉しかったよ。



「和紀さんは、その事を言う為に・・・?」



「海里が、『めぐ、引きこもりになってるかもしれないから。ついでに、しっかり見てきて!』って」



馬鹿め。


海里の優しさが、伝わりすぎて涙が止まらなかった。



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