キオクノカケラ

震える手を握り締めながら、自分に言い聞かせる。

でも体は正直で、まったく動こうとしない。


「もう!なんで?どうしてよ…?」


結城くんと章さんは、今戦ってくれてる。

私の為に。

見てるだけじゃだめ。

逃げてるだけじゃだめ。

震えてたって何も始まらない!

私だって、

戦える!!

目尻に浮かぶ涙を袖でぐしぐしと拭って、顔を上げる。

そして大きく一歩を踏み出した瞬間。


「誰だ!!」


ガァンッ


「っっ!」


背後からの声と、急な発砲。

幸い、弾は当たらなかったけど、あまりの突然の出来事に驚いた私は、

足がもつれてバランスを崩し、倉庫の壁に思いっきりぶつかった。


ガコ…


「え…?」


壁の向こうから何かが外れたような音がしたと思ったら、私の視界は反転していた。

撃ってきた男の人の、驚愕に満ちたような顔を見たときにはもう、

すでに私の身体は、重力に習って下へと進んでいた。


「わ、わ、わっ、何これー!」


滑り台のような下りを、頭を下にして背中で滑る。

このままだと私、頭打つよね?

しっ、死んじゃったりしないよね?!

やだっ、私まだ死にたくない!

誰か…

誰か助けて……っ!

結城くん…っ!!


ゴンッ!


「っ…たぁ……」


両目をきつく瞑って、結城くんの顔を思い浮かべて数秒後。

案の定頭をぶつけた。

でもその衝撃は思ったよりも優しく、死ぬことはなさそうだと安心する。

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