キオクノカケラ

パンッと乾いた音と共に、私の体は勢いよく倒れた。

その時、ズキンと痛みが走る。

けど、それは胸の辺りからではなく、さっき撃たれたところから。


それから少しして、目の前にもう一つ別の影がふらつく。


「っ…!!」


慌てて倒れていた体を起こすのと、目の前の影が倒れるのはほぼ同時だった。


「結城くんっ!!!」


そう叫びながら彼の体を抱き起こすと、わき腹を中心として瞬く間にシャツを赤く染め上げていった。

彼は荒い息を吐きながら、優しく微笑むと、私の頬にそっと触れる。


「詩織…大丈夫、かい?」


「っ…馬鹿……!
どうして…どうしてっ、庇った人を、庇うっ、のよぉ…!」


どうして、こんなときまで優しく笑うの…?

どうして人の心配ばかりするの?

馬鹿馬鹿!

結城くんの馬鹿…っ!


「…泣くなよ。
オレ、まだ死んだわけじゃないんだぜ……?」


「当たり前でしょ!!
絶対、死なせたりしないんだから…っ」


「はは…頼もしい、ね…。
ッ!うっ…」


「結城くんっ!
あんまり、喋らないほうがいいよ…もう少しだけ、頑張って……」


ぽたぽたと、結城くんに私の涙の雨が降る。

彼は、息も絶え絶えに私を見つめると、何かを決心したかのように口元だけに笑みを浮かべた。


「了解…オレは、大人しくしてるよ…。
…代わり、に…危なくなったら、オレを置いて外へ出るんだ。いいね…?」


「結城くんを置いて逃げるなんて…。
そんな…そんなことっ、できないよ……っ!」


「違う…逃げるんじゃない。応援を呼びに行くんだ……。
外には、章が、いるはずだから…。
っ!」


「結城くん!」


「大丈夫…オレはそう簡単には、死なないよ」


「っ……分か、った」


涙を必死に堪えながら頷くと、結城くんは安心したように微笑んだ。

そんな彼をぎゅっと抱きしめてから、目の前の彼を睨みつける。


「私、あなたのこと…


絶対許しません」


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