キオクノカケラ
第13章


今日一日の授業が終わって、教室はガヤガヤと騒がしい。

さっさと支度をして帰る者、友人とのお喋りに華を咲かせている者。


そんな中、私は身支度もそこそこに、ぼんやりと外を眺めていた。


どうせ支度が終わったところで、私は勝手に帰ることはできない。

これから毎日、健斗が迎えに来るのを待って。

学校に行くときも送ってもらう。

これは《あの人》との契約内容の一つ。

最初は《あの人》が送り迎えをするはずだったけど。

健斗が役目を買って出てくれたおかげで、それは免れた。


ほっとした反面、自分の不甲斐なさを痛感した。


あの時、一緒に考えるとか言っておきながら。

私は結局守られてる。


私は唇を噛んだ。

――どうしたらいいんだろう。

病院であの人が持ち掛けてきた契約。

私の選択は正しかったのかな…?

ふと不安が胸をよぎる。

正しかったと思いたいけど。

これで全てうまくいくとは思えないし、思ってもいない。


嫌な予感がする―――。







「…………結城くん……」



ぽつりと愛しい人の名前を呟く。

いつだって、私が不安な時にそばにいてくれた。

手を握ってくれた。

『大丈夫。オレがついてる』そう言って微笑んでくれた。










―――――会いたい。




彼の顔が頭から離れない。


自分から突き放したくせに、なんて自分勝手なんだろうと思う。


でも会いたいという気持ちはどんどん膨らむばかりで…。


何度でも、彼の名前を呼んでしまう。




「…結城、くん……っ」


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