キオクノカケラ
自分が思ったことを言われて驚いたのか、

詩織は、勢いよくこちらに振り向いた。


オレは、そんな彼女に優しく笑かける。

だろ？と言う風に。


「頭領…会議は終わったんですか？」


「まあな。早く詩織と話しがしたくてね、さっさと終わらせてきたよ」


章の質問に、テキトーに答えながら、

詩織と章の間に歩く。

そして、羽織っていた上着を彼女にかけてやる。


「そんな薄着だと風邪をひくよ？もうすぐ10月なんだから」


「うん、ありがとう。でも結城くんが寒いでしょう？私は大丈夫だから、着て？」


遠慮深いとゆーか、なんとゆーか……。

普段、オレは上着なんて羽織っているだけで、

寒いかなんて気にすることじゃあない。


それよか、お前が風邪をひくんじゃないかってほうが心配だね。


オレに上着を返そうと、肩にかけた手を、上から握って制すると、


「オレは大丈夫だから、着てな」


手を握ったまま小さく笑ってやると、彼女は頬をほんのり赤く染めて

おとなしく頷いた。


「ありが、とう」


「ん」


下を向いたままお礼を言う詩織の頭を、オレは軽く撫でた。


そんなオレたちを章が見ていたのに気づいたが、あえて無視した。

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