キオクノカケラ

そう

普通は、ね。


オレは両手でそっと詩織の頬を挟み込み、上を向かせる。


「けど生憎オレは普通じゃない。
詩織、お前ももう分かってると思うけど、オレはそこら辺にいる一般人とは違うんだ」


そのせいでオレは、詩織を何度も危険な目に遭わせてきた。

出会った頃から

今まで

オレのせいで……―――。


「結城…くん?」


はっと我にかえると、詩織が心配そうにこちらを見ていた。

駄目だな…オレ

今は、詩織を守ることだけ考えればいいんだ。


「詩織…外で何があっても、絶対にここから出るなよ。
この布を被って、じっとしてるんだ」


そう言って章が渡した防弾の布を頭に被せてやる。

すると詩織はオレの手首をぐっと掴んで、不安気に尋ねた。


「結城くんは?結城くんはどうするの?これから何をしようとしているの?
こんなところに隠れてるだけなんて嫌!私も連れてって!!」


だんだんと声を荒らげながらも、その瞳には涙が浮かんでいた。

オレはその涙を指先で拭ってやると、なるべく優しく微笑む。

そして安心させるように、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「オレは外を片付けてくる。
大丈夫、すぐ迎えに来るから」





「お前は、オレが守るから」





そのまま詩織の唇に自分の唇を重ねた。

彼女は驚いて目を見開いていたのが分かったけど、最初のように平手は飛んでこなかった。

そのことに内心ほっとしつつ、名残惜しくもそっと顔を離した。

そして、何か言いたそうな詩織を無視してオレは来た道を戻っていった。




詩織は絶対に守る

今度こそ

何に変えても――…




その決意を胸に

オレは銃を構えて、同じく銃を構えた章の横に並んだ。

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