私の空・僕の先生
「先生これ、お腹も空いたでしょ?」

私たちは食事をしながら、楽しい時間を過ごした。

『閉演、30分前です』

場内アナウンスが流れてきた。

「先生、最後に観覧車乗ろう」

「うん」

観覧車の中で、私たちは黙ったまま、外の景色を見ていた。

頂上に着いた時、街の夜景が、目に飛び込んできた。

「わぁ・・・きれい。・・・今日は、連れてきてくれて、ありがとう」

「ううん。オレが無理やり連れてきたんだから、お礼なんて言わないでよ。・・・先生これ。付き合ってくれたお礼」

ポケットから、小さな紙袋を取り出して、私に差し出した。

「開けて、いい?」

「うん」

中には携帯のストラップが入っていた。

空の方を見ると、空の携帯にも、色違いのストラップがしてあった。

「先生とおそろい」

そう言って、微笑んだ。

「ほんとだ。・・・ありがとね。大事にするよ」

帰りの電車の中、私の携帯が鳴りだした。

・・・アッ君からだった。

私は席を立ち、空に聞こえないところまで行くと、携帯に出た。

話が終わり席に戻ると、空が、小さな声で呟いた。

「先生…彼氏から?」

「あ・・・うん」

私たちの間に、なんだか見えない線が張られたように、沈黙が流れていた。

家の前まで、空が送ってくれた。

「送ってくれて、ありがとう」

「うん・・・先生、あのさ…」

空が何か言いかけた時、私たちの横を一台の車が通り過ぎて、とまった。

「アッ君」

「エッ?!」

空は前田先生の顔をみつめた。

「先生の彼氏って、・・・前田先生?」

「…うん、そうだよ」
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