初恋タイムスリップ(成海side)
「なんでだよ!!
林が桜木に『彼氏作らないの?』って聞いたら、『忘れられない人がいる』って答えたって。
桜木は成海以外誰とも付き合ってないらしいから、
どう考えてもお前のことだろ!!」
篤志は頭を、ぐしゃぐしゃっとかいた。
篤志の話しを聞いて、
今、美音に会いたいと正直思った。
また、やり直せるかもしれない。
そんな気がしてしまった。
でも、それはできない。
「篤志、俺…
大学は東京に行くっていっただろ」
篤志は、ハッとした。
「東…京…
そうか…優の病院か」
「もう、小6の時から決めていたんだ。
優が人工内耳の手術をした東京のT大病院で俺…
絶対に耳鼻科医になるんだって。
優を手術した医者みたいに、難聴の人の役に立つ医者になりたいんだ。
ずっと
それが俺の夢だったんだ」
篤志も優を可愛がってくれているから、
優の耳の事をすごく理解してくれている。
俺が小学3年の時に優が生まれて、
小学4年の時に優の耳が聞こえない事がわかって、
『優は耳が聞こえないんだ』って、
校庭の隅で10歳の篤志に言ったら、
なぜか篤志がわんわん泣いた。
そして俺の肩を叩いて言ったんだ。
『優は、大丈夫だ!!』
大丈夫だ!!
大丈夫だ!!
篤志は何回も何回も
泣きながら言っていた。
その言葉で俺は、
本当に
『聞こえなくたって大丈夫だ』って
思えるようになったんだ。