初恋タイムスリップ(成海side)




そんな一日の終わりがどこなのかわからない生活を続けて、

9ヶ月を過ぎようとしていたある日の朝。

「熊野教授が、午後は成海先生を呼んでって」



え?


「熊野教授が……ですか?」

指導医の先生が頷いた。



「成海先生にきてもらってって、熊野教授直々に。

成海先生…なんかあった?」


え………


「なんか俺……やっちゃったかな……」




俺は初めて熊野教授に近づけるチャンスがきた喜びよりも、


名指しで俺を呼んだって事は、

なんかやっちゃったに違いない………と、

その名の通り熊みたいに大きな体の熊野教授に叱られる恐怖心の方が

強かった。





そして恐怖の午後はあっという間にやってきて、


びくびくしながら耳鼻咽喉科へと向かった。





10人の耳鼻科医が横に並んで外来の診察をしていて、

間はカ−テンで仕切られている。


俺は1番奥の熊野教授の元へ近づいた。

熊野教授はパソコンとカルテを交互に見ていた。

患者はまだ椅子にいなかった。


「すみません、成海です」



ドキドキしながら初めてそう声をかけた。




「そこで見てて。


今泉風也(いまいずみふうや)く−ん

どうぞ−」



えっ。


何がなんだかわからないまま、患者が通された。


カ−テンが開き、


男の子が入ってきて診察の椅子に座った。

そしてその隣にお母さんが入ってきた。
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