初恋タイムスリップ(成海side)
「ごめん。待たせて」
篤志にそう声をかけて、俺たちは校門を出て左へ曲がった。
「お前も、大変だな。小学校の時も・・
そういえば、幼稚園の時もあったな。
相手の子が、わんわん泣いたじゃん。
俺、すっげー覚えてる」
・・幼稚園?
「俺、全然覚えてねーや」
篤志は、あはははっと笑った。
「そんなもんか。
断る方は、覚えてねーか。
でも、断られた方は・・どうなんだろうな」
断られた方・・・
そんなこと考えたこともなかった。
「好きな子がいるって断ったんだろ?さっきの」
「まあ・・な」
「桜木が音楽室から眺めていたのが、
成海だったって判明したしな」
そう言って、また篤志が変顔をしてきた。
「ふっっ。まだ、わかんねーよ」
俺はまた、篤志の変顔で笑ってしまった。
「間違いなく、成海だよ。
体育倉庫に走って行く時も、
ずっと目で追ってたよ」
そう言って篤志は少し真剣な顔になった。
「気をつけろよ」
篤志は立ち止まった。
「成海の好きな女が、桜木だと、
お前のことを好きな女子達が知ったら、
桜木が攻撃されるかもしれない。
だから、気をつけろよ」
桜木を攻撃・・
「そんなこと、させねーよ」
俺はその時、そんなことはないだろうと、
篤志の話を、軽く聞き流していた。