純愛☆フライング―番外編―
でも、当の志穂は何のことかさっぱりわからないらしい。


「アソコに立ってる彼女だよ。なんで覚えていたのかって、男連れで来るからさ。それが上にいた野郎だ。残念だったな」


嫉妬全開の嫌味で言ったつもりだが、逆に志穂は嬉しそうにヘラヘラ笑っている。


「そっかー、彼氏持ちなんだ。そっかそっかー。たっちゃんのケーキ好きなんて、いい人だよね~」


(……なんか、墓穴を掘った気がするのは、気のせいか?)


「たっちゃん、どうする?」


ニコニコ笑う志穂の顔を見ていると、まあ、どうでもいいか、という気になってくる。

それに、当たる確率は果てしなく低い。さっきだって2回引いてティッシュを2個もらっていたくらいだ。どうせ、巽が勝つのは目に見えている。

彼はOKのサインを出した。
 


5分後、洋鈴の澄んだ音が抽選会場に響き渡り――。


数人の係員から『おめでとうございます』の合唱で見送られ、フライパンを手に青ざめる巽であった。



                        ~fin~


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