さくら一粒


「了解。」


それは短くも確実に自分の意思を伝える効果的な言葉。

なのは分かる。

しかし。

「ちょっと短すぎじゃない?」

明らかに怒気を含んだ声で詩織は呟いた。

久しぶりに会う恋人からのメールだ。

今から会社を出て向かいます、これに多少の可愛さと絵文字を付けて送ったメールだ。

普通でもない、快速でもない、特急という最速の手段を使って今まさに、貴方の所へ移動しているというのに何の感情ももたないというのか。

返信のタイムラグなんか問題じゃない。

絵文字が無いとか、そんな小さなことも言わない。

昨日の夜から今日の為、まさに今からの為に準備をしていた。

無駄な時間を使わず、なるべく2人の時間を有意義に過ごせるように何度も荷物チェックだってしているのだ。

「こっちだって仕事終わりなんだから労いの言葉くらい送れっつーの。」

苛立ちを隠せないまま携帯を鞄の中に投げ入れた。

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